第68章 やらないなら、ほかを当たる

杉浦杏奈はエレベーターへ駆け込み、ボタンの「1」を狂ったように連打した。

「早くしろよ……クソ! 早く! 壊れてんのか!」

荒い息が喉を擦り、脳裏に前世の記憶が雪崩れ込む。

前世も同じスイートルーム、同じ場所だった。杉浦杏奈は、連れて行かれるようにして中へ入れられた。

彼らが自分を連れ戻したのは、杉浦家の人間がようやく思い出してくれたからだと――家族として迎え、やり直せるのだと、そう信じた。

虐待してきた連中の態度まで妙に柔らかくなり、身体の傷も、数日前から治療が始まっていた。

夢が叶う。もうすぐ家に帰れる。

そう思って、胸を躍らせて戻ったのに。

部屋へ押し込まれた瞬間、そこ...

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